【第三幕 第一場】
月曜の昼下がり。
ベンヴォーリオとマキューシオは、決闘が行われる広場に来ていました。そこにティボルトたちがやって来ます。
ティボルト:「おまえたち、昨日はよくも我がキャピュレット家の夜会に忍び込んだな」
ティボルトは、ベンヴォーリオとマキューシオを見つけると、二人に詰め寄りました。昨夜の怒りが収まっていなかったのです。
マキューシオ:「ああ、昨日は実に楽しい夜会だったよ。どうもありがとう」
ティボルト:「おい、マキューシオ。ヴェローナ太守エスカラスの親戚だからって調子に乗るなよ。モンタギューとエスカラスの飼い犬め」
マキューシオ:「おもしろいな。もう一度言ってみろよ」
ティボルト:「今日のおれの相手はロミオだ。犬はそこで見ていろ」
マキューシオ:「ロミオの前におれが相手をしてやろうか?」
マキューシオが剣を手にして、ティボルトの前に進み出て来ました。
ベンヴォーリオ:「よせ、マキューシオ」
そこへ、ロミオがやって来ました。
ティボルト:「来たか、ロミオ。さあ剣を抜け」
ティボルトはロミオが決闘に来たと思いました。しかし、ロミオは果し状が届いていることを知りません。さらに、ジュリエットと結婚式を挙げたばかりで幸せな気持ちにあふれています。
ロミオ:「ティボルト、君がなぜ怒っているのかわからないんだ。もし僕が原因なら、どうか許してほしい。そして、これからは仲良くしてもらえないだろうか」
ロミオは、ジュリエットの従兄弟であるティボルトと決闘したくありませんでした。そのため、ロミオはティボルトに許しを乞い、仲直りしようとします。
ティボルト:「闘わないつもりか、臆病者め。さっさと剣を抜け!」
ロミオはそれでも剣を抜こうとはしません。マキューシオは、ロミオの弱腰な態度に苛立ちました。
マキューシオ:「ロミオ、なぜ闘わないんだ。こんな奴に馬鹿にされたままでいいのか」
ロミオ:「マキューシオ、僕は今世界一幸せなんだ。だから、みんなにも幸せになってほしい。闘う必要なんてないんだ」
マキューシオ:「ロミオ、おまえがそんなに臆病だとは。見損なったぞ。おいティボルト、おれが相手だ。かかってこい」
マキューシオは剣を抜くと、ティボルトと切り合いを始めました。
ロミオは二人の間に割って入りました。
ロミオ:「やめるんだ、二人とも。エスカラス様からけんかは禁止されているだろう!」
ロミオが二人を止めていると、ティボルトがロミオの腕の下から手を伸ばし、マキューシオの胸を剣で貫きました。
ロミオ:「ああ、マキューシオ!なんてことだ!」
ベンヴォーリオ:「ティボルトめ、ロミオの影から突き刺すとは!」
マキューシオ:「ロミオ、おまえが邪魔したおかげで、おれは墓場行きだ。モンタギュー家もキャピュレット家も地獄に落ちろ!」
マキューシオは、両家を呪って生き絶えました。
ロミオ:「ああ、マキューシオ!マキューシオ!おのれティボルト、よくもマキューシオを!」
ロミオは悲しみと怒りで我を忘れて剣を抜き、ティボルトに襲いかかります。
ティボルト:「おまえもマキューシオの元に送ってやる!」
ベンヴォーリオ:「よせ、二人とも!エスカラス様から、けんかをしたら重い罰を与えると言われているだろう!」
ベンヴォーリオは二人を止めようとします。しかし、怒り狂ったロミオはティボルトを切り殺してしまいました。
ベンヴォーリオ:「ああ、なんということだ。このままではロミオが捕まってしまう。ロミオ、いったんここから逃げるんだ」
ベンヴォーリオは、この場からロミオを逃がします。
その時、騒ぎを聞いたヴェローナ太守エスカラスが兵を連れてやって来ました。
エスカラス:「おまえたち、何をしておる!倒れているのはマキューシオか!?」
さらに、キャピュレト夫妻、モンタギュー夫妻も駆け付けました。
キャピュレット:「おぉ、ティボルト!なんということだ!」
モンタギュー:「こ、これはいったい…」
エスカラス:「ベンヴォーリオ!何があったのか説明せよ!」
エスカラスは何事があったかをベンヴォーリオに問いただします。ベンヴォーリオは一部始終を説明しました。
キャピュレット夫人:「なんてかわいそうなティボルト!今すぐロミオとモンタギュー家全員を死刑にして、責任を取らせて!」
エスカラス:「黙れ!ならば、ティボルトがマキューシオを殺した罪で、キャピュレット家も全員死刑にするぞ!」
キャピュレット夫人は泣き崩れました。
モンタギュー:「エスカラス様、ロミオはマキューシオの仇を取っただけなのです。なにとぞ、お慈悲を」
エスカラス:「ロミオが訳もなくティボルトを殺すことはなかろう。しかし、罪は罪。ロミオは追放とし、再びヴェローナに戻って来た時は死刑にする」
モンタギュー夫人:「そんな、ロミオを追放だなんて。あんまりです」
こうして、ロミオはヴェローナを追放されることになりました。
【第三幕 第二場】
月曜の夕方。
ジュリエットは何も知らずに、キャピュレット家の庭でロミオが迎えにくるのを待っていました。そこへ乳母が帰ってきます。
乳母:「ジュリエットお嬢様、大変なことになりました。ロミオ様がティボルト様を殺し、町から追放になりました」
ジュリエット:「そ、そんな…」
乳母:「ロミオ様の居場所も調べました。ロレンス神父の教会にいます」
ジュリエット:「ロミオに伝言をお願い。今夜、町を出る前に会いに来て。あと、彼にわたしの指輪を渡して」
乳母:「わかりました。ロミオ様がベランダに来れるよう、はしごも用意しますね」
ジュリエットは、乳母をロレンス神父の元に向かわせました。
【第三幕 第三場】
月曜の夜。
ロミオは、ロレンス神父の教会にいました。
ロレンス:「ロミオ、君に追放が言い渡された。明日までに町を出なさい。さもないと捕まって死刑になってしまうぞ」
ロミオ:「そんな。ジュリエットと離れるなんて」
ロレンス:「追放は厳しいが、それでも君を死刑にしなかったエスカラス様に感謝するんだ」
そこにジュリエットの乳母がやってきます。
乳母:「神父様、こんばんは。ジュリエットお嬢様の遣いで参りました。ロミオ様はいますか」
ロミオが乳母にジュリエットの様子を訪ねると、ジュリエットは従兄弟のティボルトが死んだこと、ティボルトを殺したのがロミオであること、そしてロミオが追放になったことを深く悲しみ、泣き続けていると伝えました。
ロミオ:「この先、ジュリエットに会えない生活など考えられない。いっそのこと死んでしまおう」
ロレンス:「そんなことを考えてはいかん」
ロレンス神父は、ロミオは死刑にならなかったのだからやり直せると諭します。そして、時期を見て二人の結婚を両家に伝え、ロミオをヴェローナに呼び戻すので、それまではマントヴァの町で過ごすように言いました。
乳母:「ロミオ様、ジュリエットお嬢様からの伝言です。この指輪を受け取ってください、そして今夜、町を出る前に会いに来てほしい、とのことです」
乳母は、ジュリエットから預かってきた指輪をロミオに渡しました。
ロミオ:「ありがとう、乳母様。この指輪をジュリエットだと思って、マントヴァで待つことにします」
ロミオは気を取り直すと、二人に感謝の言葉を述べて教会を後にしました。
【第三幕 第四場】
月曜の深夜。
キャピュレット家では、キャピュレット夫妻とパリスが、ジュリエットとの結婚について話しています。
パリス:「キャピュレットさん、ジュリエットはティボルトが亡くなって落ち込んでいるでしょう。結婚式は日を改めませんか?」
しかし、キャピュレットはパリスとジュリエットの結婚を望んでいます。
キャピュレット:「ジュリエットは落ち込んでいるが、あなたの支えがあればきっと立ち直れる。早めに結婚式を行いましょう」
キャピュレットはパリスに対して、結婚式を三日後の木曜に行うことを約束をしました。
【第三幕 第五場】
月曜の深夜。
その頃、ジュリエットの部屋のバルコニーには、ロミオの姿がありました。旅立ち前の挨拶に訪れたのです。ジュリエットがバルコニーから縄ばしごを垂らし、二人はつかの間の再開を喜び、別れを悲しみました。
火曜日の早朝。
乳母が、キャピュレット夫人がジュリエットの部屋に来ることを教えに来ました。ロミオは、ジュリエットに手紙を出す約束をして、ベランダから立ち去ります。
キャピュレット夫人が部屋にやって来た時、ジュリエットは、ロミオと離れる悲しみで泣いていました。
キャピュレット夫人:「ジュリエット、元気をお出し。パリス様と結婚すれば、あなたの気持ちも晴れるでしょう」
ジュリエット:「いいえ、お母様。わたしはパリス様と結婚することはできません」
キャピュレット夫人:「それは許しません。二日後の木曜にジュリエットとパリス様の結婚式を行います」
それでもジュリエットが拒むと、キャピュレットがやって来ます。
キャピュレット:「ジュリエットよ。パリス殿は家柄も人柄も良い。必ずおまえを幸せにしてくれるはずだ」
ジュリエット:「それでもいやなのです。どうかお許しください」
ジュリエットがかたくなに拒むので、キャピュレットは怒りました。
キャピュレット:「だめだ!どうしても結婚を断るというのなら、この家から出て行くのだ!」
キャピュレット夫人:「そうですよ、ジュリエット。わがままは許しません」
ジュリエット:「そんな。乳母様、なんとかして」
ジュリエットは乳母に助けを求めましたが、乳母もパリスとの結婚に賛成します。
乳母:「申し訳ありません、お嬢様。将来のことを考えますと、パリス様とのご結婚はよろしいことかと…」
ジュリエットは、乳母だけは自分の味方だと信じていたので、裏切られたと思います。
ジュリエット:「……そうですか。では、そのようにします」
この一件で、乳母はジュリエットからの信用を失いました。そしてジュリエットは、結婚前にロレンス神父に懺悔をすると言い、教会へと向かいました。
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※「LEGOお話 ロミオとジュリエット」の文章は、下記文献を参考にマツヒラが現代口語にて書き直しております。
【出典】
出典:青空文庫「ロミオとヂュリエット」
URL:https://www.aozora.gr.jp/cards/000264/card42773.html
作:ウイリアム・シェイクスピア
翻訳:坪内逍遥
底本:ロミオとヂュリエット 新修シェークスピヤ全集 第二十五卷
出版社:中央公論社
初版発行日:1933(昭和8)年10月30日
入力に使用:1933(昭和8)年10月30日
校正に使用:1933(昭和8)年10月30日
青空文庫 工作員データ:入力…osawa 校正…土屋隆
【青空文庫さまの著作権などの各種権利について】
青空文庫さまにおける著作権のお考えを元に、参考文献として使用しても問題ないと考え使用させていただきました。
参照:青空文庫収録ファイルの取り扱い基準
URL:https://www.aozora.gr.jp/guide/kijyunn.html